仕事人生とは、仕事ばっかりの人生というわけではない

 ここでいう「仕事人生」というのは、人生の中で、つまり生きていく中で「働く」ことや「仕事をする」ということに関わる部分を指しています。
 働いている時間、つまり「労働時間」を集積したものという意味ではありません。実際に働いている、仕事をしているだけでなく、そうしたことに思いを馳せているときも含めています。なので、毎日毎日仕事のことばかりを考えているというのは、人生の中で仕事人生が占める部分が大きいと言えます。また、仕事をしていても「休みになったら今度はどこに行こうかな?」とかと考えていることが多いとすれば、その人に取っての仕事人生の重みは今は小さいということもできるでしょう。
 そしてこれはどちらかが良いというわけではありません。今仕事が楽しくって仕方がないというのでしたら仕事人生部分が大きくても良いでしょうし、「休みの日まで仕事が頭から離れないのが苦痛でしょうがない」というひとにとっては仕事人生が大きすぎるのが「問題」ということになります。
 つまり、仕事人生をどのくらいにしたいかというのは、そのひとの仕事や働くことに対する考え方(仕事観、労働観)ということになります。

 ですから、今仕事をしている人はもちろんのこと、「これからどんなふうに仕事をしていこうか」「どんな働き方をしていこうか」ということを考えたり、悩んだりすることも、これからの仕事人生に関わることということで、仕事人生の諸問題に含まれることになります。

会社の仕事だけが仕事なのでもない 

 また、ここでいう仕事は、生活の糧を得るための仕事(生業、職業)にとどまらないと考えたいところです。働くということは確かに「賃金を得る」という側面もありますが、そこにやりがいや充足感を求めるということでもあります。そうしたもののためには、無償であってもボランティアなどで何かの役割を引き受けていくこともあります。これらも仕事といえるでしょう。会社の中だけにとどまらず、社会や組織の中で一定の役割責任を引き受けていくことも仕事といって良いのではないでしょうか? そう考えると、例えば地域の防災組織で活動するだとか、子どもたちの関係でPTAの活動に従事したり、スポーツチームのお世話をしたりということも仕事に含まれることになります。
 この結果、会社の仕事と地域活動の仕事の間でどちらを重視するかというせめぎ合いも個人の中で、あるいはその集団の中で起きてくることもありそうです。これもまた仕事人生にまつわる諸問題の一つになるのではないでしょうか?

 また、働くことはふだんの生活の中の出来事なので、どのように生きるか、なんのために生きるかといった人生観、人間観とも関係します。もっと仕事をしたい、集中したいのに家庭のことに気を配らなければならないということは家族観にも関わります。
 生活との関係でいえば、いつ復職するか、どういう形で復職するのかということもあります。もちろん子育てに限らず、介護のこともありますし、ご自身の体調にまつわることもあるでしょう。

仕事人生を取り上げる中で人生そのものも取り上げられる

 仕事人生に関わる諸問題は会社の仕事をどうするかということだけでなく、広く人生全体、つまり全人生の諸問題とも繋がっているといえます。「仕事」や「働くこと」に関することととはいえ、その対象範囲は幅広く、働いている期間だけではないという意味では子どもから学生、成人、そしてご隠居さんまでも含んだ一生という長期のことでもあるといえます。
 そう考えると、私たちACCNキャリアコンサルタントが一人ひとりの「仕事人生」を大切にするということは、わざわざ「人生そのもの」といわなくても当然にその人の全人生を視野に入れているということでもあるのです。