ACCN Wayに期待すること、会員の皆さんにお願いしたいこと

 キャリアコンサルタントの活動を支援することを通して、国民のキャリア形成に関わる社会課題の解決に貢献する。ACCNがキャリアコンサルタントの職能団体として掲げるミッションです。
 このミッションを達成するためACCNは様々な活動を行っていますが、そのなかの中核となる分野の一つが「キャリアコンサルタントの品位・資質の向上をはかる」ための活動です。今回の倫理委員会のACCN WAYを作成する取り組みはその活動の一環であり、「キャリアコンサルタントの品位・資質の向上をはかる」を支えるプラットホームを作る大切な取組みです。
 キャリアコンサルタントは様々な場面で、様々な問題に直面し、「どう対応すべきか」に悩みながらキャリア支援の活動を行っています。「どう対応すべきか」は個々のキャリアコンサルタントに任されていますが、誤った対応をとらない、あるいは、より適切な対応をとるうえで参考になる、あるいは準拠できる行動指針があれば、キャリアコンサルタントの活動の質の向上につながります。
 ACCN_Wayはこの行動指針、さらには「ACCNならでは」の内容をもつ「ACCN版」の行動指針です。倫理委員会はいまACCN_Wayの作成に精力的に取り組んでいますが、ACCN_Wayが「ACCN版」の行動指針になるには、会員の皆さんの考えや意見が反映される必要があります。
 会員の皆さんへのお願いです。今回の倫理委員会の取組みに、ご協力いただきたくお願い申し上げます。

代表理事 今野 浩一郎

倫理委員会委員長の思い

 古代ギリシャの哲学者であるソクラテスは徳の倫理を説くために、「よく生きるとは何か?」を人々に問い、人々が自ら考え、それを行動に移すことを求めました。後年に古代ギリシャの大倫理学者となるアリストテレスは、このソクラテスの問題提起を受けて、「よく生きること」について考えました。特に、「よく」ということに着目し、「よき(善)とは何か?」と自身に問いかけました。そして、「善とは、すべての人が目指すもの」だと考え、「善とは目的である」と説くに至りました。この徳の倫理を背景として、私たちキャリアコンサルタントの職能団体であるACCNの職業倫理とは何か? を説くためには、私たちがクライアントにとって「善い仕事をするとは何か?」を自ら問い、考え、実践活動に結びつけていくことにあると考えます。
 そのために、ACCN倫理委員会では、今一度、私たちキャリアコンサルタンが目指すべき目的・存在意義、社会的役割を明らかにし、善い仕事の倫理的価値観を全員で共有することを目的に、ACCN_Wayを明文化することにしました。このACCN_Wayを、私たちキャリアコンサルタントが社会を変革するエージェントとして、誇りをもち、善い仕事を通じて社会全体に資する道標となることを、心から祈念しています。

倫理委員会メンバーの願い

○キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラー、キャリアアドバイザー等など、役割や資格の名称によって、その団体の理念、その方の思い、目指すあり方、常としているありようもいろいろあるのだろうなと思っています。いろいろあって当然かもしれませんが、ここACCNに集うわたしたちは国家資格キャリアコンサルタントとして存在しています。このACCN_Wayを共有することが、お互いを理解し、お互いをリスペクトし、世の中に必要としていただける専門家であることを考え、自身の成長の機会としていただけたら嬉しいです。私も、このWayを何度も読み、Wayについて何度も話合い何度も考えたいと思っています。

○現在、「キャリアコンサルタント」という資格保持者が約7万人(2023年7月現在)と言われています。そのお一人お一人のキャリアコンサルタント観はそれぞれ。
 そのお一人お一人がベテランさんも新人さんも経験に関係なく、このACCN_Wayを通して自らが「キャリアコンサルタント」としての目的や、目指す方向性、役割を考えることでこの資格に対する想いや誇り、価値観、ともにつながることの大切さに気付き、さらにはこれからの相談者との関わり方、また社会への存在意義の発信などに活かしていただける基盤としていただければ幸いです。また、我流ではなく、基本に戻すための材料として拡がっていくことを願っています。
 目の前の相談者に寄り添い、その人のターニングポイントをその人らしく進めるようお手伝いする「人生の伴走者」として、自己も他者も大切に「キャリアコンサルタント」というお仕事を一緒に考えていければ嬉しいです

○私が倫理委員会メンバーと議論する中で大切にしているのは、クライアントは自ら考えて意思決定できる存在だと信じることです。私たちは、あまりにクライアントを支援したいという強い気持ちを持つため、解決策を代わりに考えて良かれと思って押し付けるようなことがないでしょうか。それは、クライアントの成長の機会を奪っていることになりかねません。もどかしい気持ちに耐えながら、クライアントが表明する意思をじっと待つキャリアコンサルタントでありたいと思っています。

○皆さんはキャリアコンサルタントという専門家として何を目指すのか、どうなりたいのか、ご自分なりにお考えのことと思います。例えば目の前の相談者に的確なアドバイスすることを目指す人もいるでしょう。また、カウンセリング心理学の知識やスキルを活用しようとする人もいるでしょう。これらは上手なコンサルティングを目指すものだと思います。技術的な良し悪しを意味することが多いので「良い」コンサルティングとも言えます。これに加え、「善い」コンサルティングを目指してはどうでしょうか。自分が行うコンサルティングの善し悪しを検討することで、相談者の利益に結びつけようとする視点です。これは別の表現をすると「倫理的なコンサルティング」だと思います。この表現がキャリアコンサルタント同士の会話に頻繁に出るようになってほしいと思います。

○こどもたちがさまざまな職業を体験することができるアトラクションがあります。その中に「キャリアコンサルタント」という職業が紹介されていました。この業界(?)に関わった頃は「キャリア」と検索すれば「携帯電話」や「通信会社」のことばかりがでてきたものですが、随分と変わったものだとおもいました。それにしても世の中にとって「キャリアコンサルタント」ってどんな存在なのでしょう? アトラクションでは適性検査をしてそれを見て仕事を紹介するということをやっていたようです。確かにそれもあるのでしょうけれど、私たちの活動の幅広さ、奥深さはまだまだ知られていないようです。ACCN_Wayを一人ひとりのACCNキャリアコンサルタントが語ることで多くの方々に理解してもらえることを期待しています。